父親の教え 自分の判断
代掻きと田植えが他の生産者よりも10日から2週間早かったこともあり、6月の生育調査では幾分育ち過ぎていた。育つものは仕方がないが、夏から秋に成長し過ぎてもよくない。草丈が伸びれば、他の品種よりも茎の細いササニシキは倒れやすくなる。土中のガスを抜き、根をしっかり張らせるための水管理に、「溝切り」作業がとても重要になってくる。
20ヘクタール以上の水田を経営管理する雄一さんの家では、4品種とササニシキを作付けしている。改良され栽培しやすいといわれる品種よりも、デリケートなササニシキについては神経を使うようだ。ここ斎川、土壌は粘土質で米がうまいと定評がある。一方で、山と山に挟まれた地形、風の通りにくさは多少なりともある。気温が低くても、湿度が高ければ「いもち病」にもなりやすい。その懸念はどの生産者にも共通で、これからの季節は冷害や台風など天候の影響も心配される。
父親にいつも作業状況を話しながら、時には口喧嘩になりながら作業を進めている様子。長年の経験値と自分の判断、衝突は絶えないが、「うまい米を作りたい」という共通の目標があるからこそだろう。
「米研ぎは何回も何回もやったから、俺が炊いたご飯はうまいって言われる」
雄一さんは地元の寿司屋さんでアルバイトをしていたことがあるそうだ。当時はもちろんササニシキ。現在でも流通量の少ないササニシキを使う寿司屋さんは多いと聞く。食材の味がより引き立ち、口の中でほどけるササニシキはどんな和食にもよく合う。教えられた米の研ぎ方、水加減、やってみると納得の炊きあがりだった。
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