ふるさとのまつり 記憶と記録【越河 諏訪神社「第25回 丙申の年 御柱祭」里曳き祭(平成28年7月31日)】

家族をつなぎ 地域をつなぐ伝統祭事

諏訪神社御柱祭里曳き祭01

御柱祭2日目の「里曳き祭」の朝、前日の「山出し祭」と献木者宅で開かれたご神事での祝杯の余韻を残し、氏子たちが通りに集まってきた。献木はこの日旧街道の一本道を往復し、高台の諏訪神社に奉納される。地域の防火、鎮火を祈願する火伏せの神事、制服に身を包んだ消防団員も献木を囲んだ。

けたたましい蝉の鳴き声。連日好天に恵まれ、朝から強い日差しが照りつける。中川宮司による献木者宅前でのご神事に続き、高らかな「木遣り歌」。氏子たちは今日も木を曳きはじめた。

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旧街道に、里引き祭を盛り上げる子どもたちが集まった。「こんなに子どもいたんだね……」年輩者が目を細めて眺めていた。沿道には、その歓声に笑顔する多くの女性の姿。祭りに出るのは男たち、それを見守るのが女性なのだろう。幼い孫の手を引き、満面の笑みで歩く氏子の姿。故郷の祭りのために帰省したという娘さんや子どもたちの姿。平日は会社勤め、今日は父親と歩く息子たちの姿……。氏子とその家族にとって「御柱祭」は特別な伝統行事。巡ってきた今日という日を一緒に楽しもうじゃないか!そんな雰囲気に包まれ、あちらこちらで笑顔がこぼれる。暑い中声をかけ合い、互いの健康や子どもたちの成長を喜び、一本道を練り歩いていた。

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旧街道を往復し、いよいよ諏訪神社を望む参道入り口へ。ここからが再び氏子たちの力仕事である。旧街道から直角に曲がる狭い道。高架下をくぐり諏訪神社の登り口まで、慎重に向きを修正しながら木が曳かれた。

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諏訪神社御柱祭里曳き祭12

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長い石段上の社殿に目をやると、先に到着した中川宮司が見守っていた。重い杉の巨木、気が抜けない最後の大仕事。男たちは大きな掛け声を出し、一本の綱を曳き上げはじめた。

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息も揃わなければこの巨木を納めることはできない。「あぶねーぞ!」「違う!違う!」木が動く度に飛び交う怒号のような掛け声。張り詰めた異様な空気が流れ、皆真剣だった。県境の山から氏子たちの里へ。献木に力を注ぐ祭りの最後、ついに長さ7メートル余りの巨木が社殿脇に納められた。

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木は氏子たちの手によって清められた。前宮司亡き後、この神社を引き継ぎ、初めて祭りの斎行にご尽力された斎川の田村神社中川宮司のご祈祷に、先ほどまでの喧騒は消え、静まり返る厳かな境内。全てがここに集約し、「御柱祭」の祭りの意味を物語っていた。皆が見上げる杉の巨木は実に見事にそびえ立ち、境内に万感の「万歳」が響き渡った。

【取材後記】

米プロジェクト取材の中で、生産者の斎藤さんから献木者の樋口さんの話を聞き、樋口さんからもこの祭りの現状について話を伺いました。諏訪神社の氏子さん数人とは以前の取材でお会いしており、これまで出会った皆さんとのつながりも感じながら2日間追いかけました。

真夏の太陽の下、黙々と木を曳く氏子の皆さん、ねぎらう家族の姿は印象的でした。地域独自の伝統文化や風習が見直される一方、人口減少に伴い地域のつながりもクローズアップされています。この祭りを特別な意味で「奇祭」という方もいらっしゃいますが、まさに「貴祭」。終わった後は尊敬の念だけでした。

伝統祭事を続けることのその時々の苦悩は、支えてきた地域の人にしか分かりません。しかしながら、老若男女、地域が奮起し、これを機にふるさとに帰り、集う人々がいることも知りました。年輩者が中心となる祭り、支える若い世代からは存続の願いも聞きました。人口減少、高齢化、就業の変化など、地域の現状を考えると祭りの存続が危惧されていることは否めないかもしれません。その憂いも忘れるほどの熱気と笑顔。尊い祭りを見せていただきました。

取材にご理解いただきました献木者の樋口祝雄様、田村神社宮司の中川様、越河公民館様、そして諏訪神社の氏子の皆様と、祭りの最中、お話いただきました地域の皆様に心より感謝申し上げます。明治5年から脈々と続いてきた「御柱祭」が末長く続くことを願い、この記録を地域ゆかりの皆様にご覧いただけましたら幸いです。

【文・写真 山家和子】

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